- 医療系ものづくり
丹波市立氷上回廊フィールドミュージアム様
CTスキャン撮影をもとに幅広いソリューションをご提供
▶ 概要
兵庫県にある丹波市立氷上回廊フィールドミュージアム様では、2021年3月20日(土)にリニューアルオープンするにあたり、
新たな展示手法を導入されることになりました。
1960年代に絶滅したといわれているトゲウオ科の淡水魚『ミナミトミヨ』は、その主要展示物のひとつ。
今回のご要望は、ミナミトミヨの標本をデジタルデータ化し活用されたいとのことで、
CT撮影からものづくりまで対応している当社にお声がけいただきました。
今回のご要望に対して、当社では、CTスキャン撮影、3Dデータの作成、模型の製作、ペーパークラフトのデザインなど、
幅広いソリューションでお応えしました。
▶ 標本に適した条件下でスキャンデータを取得
ホルマリンに漬けられていたミナミトミヨは、ホルマリンから取り出し水で戻した後、不要な水分を取り除き、
当社が所有するCarl Zeiss製の高精度X線CT装置METROTOMでCTスキャン。
当日は、三橋 弘宗氏(兵庫県立人と自然の博物館 主任研究員)、
鹿野 雄一氏(九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター・九州オープンユニバーシティ所属)、
菊川 裕之氏(丹波市教育委員会文化財課・氷上回廊水分れフィールドミュージアム 副館長)
によるお立合いおよびご指導のもと、スキャン作業を進めました。
通常、CT装置内に撮影対象物を長時間設置すると、対象物が乾燥により徐々に変形しますが、
ミナミトミヨは全長が約40㎜と小さいため、15分程度でスキャン撮影を終了。
短時間でスキャンを実施した結果、乾燥によるミナミトミヨの形状変化を防ぐことができました。
また、作業前にミナミトミヨに付いていた水分をしっかり除去してスキャンしたことにより、
アーチファクト(画像上に映し出されたノイズ)が発生せず、
ほぼきれいな状態でCTスキャンデータを取得することができました。
▶ スキャンデータをもとに3Dデータに変換
スキャンしたCTデータの精度を高めるため、データ上の不要な異物を除去し欠損部を再現したうえで、汎用性の高いSTL形式の3Dデータとして出力。3Dデータは、丹波市内の小学校への出張授業時にスライドに映されるなど、博物館のアウトリーチ(研究者が一般の方に対して研究内容や研究成果を伝える活動)ツールとしても活用されています。
▶ 3Dデータを活用したものづくりの実績
今回は3Dデータを活用して、当社が持つ幅広いものづくりサービスの中からご要望に応じた3種の製作物をお納めしました。
【1.展示用のモデル】
光造形という技術を用いて、3Dデータをもとに、展示用の原寸大モデル(全長40㎜)20体と拡大モデル(全長300㎜)2体を製作。
製作した模型は、ホルマリン浸けの標本のように観るだけではなく、実際に手で触ることができるハンズオンツールとしても展示されています。ハンズオンツールは、生体に対する理解促進をサポートします。
【2. ストラップ】
3Dデータを活用して、来館者に配布するノベルティを作りたいというご要望にお応えし、真空注型という技術を活用して原寸大のモデルを100個製作。金具などの部材を社内で取り付け、オリジナルストラップとしてお納めしました。実物の大きさ、かつ、特徴的な背中のとげを精密に再現することにより、ストラップを手にした方がミナミトミヨの形態を理解する一助にもなるツールです。
【3. ペーパークラフト】
来館者が家でも楽しんでいただけるノベルティグッズとして、ミナミトミヨを立体的に組み立てて飾ることができるペーパークラフトの制作をご提案しました。社内のデザイナーが、ペーパークラフトのデザインおよびレイアウトをしたイラストレーターデータを印刷会社に入稿。最終形態のペーパークラフトをお納めしました。