- オーダーメイド臓器モデル
東京大学医学部附属病院様 新生児腸管モデルの製作
▶ 概要
新生児の腸管吻合は、腸管径が細いうえに口径差が大きいため手技が難しく、狭窄や縫合不全などの合併症が多く発生します。このような高い難度の手術手技はOff the job Training(臨床現場を離れて行なわれる研修)によって習得することが望ましいとされているものの、現状は、科学的な裏付けにもとづいた有効なトレーニング法がありません。
そうした背景のもと、東京大学医学部附属病院 小児外科の高澤 慎也先生は、新生児の腸管モデルとトレーニング方法の開発および、実際の臨床における効果の検証に取り組まれています。
▶ ブタの腸管をもとに、3Dデータを構築
新生児の腸管モデルを製作するために、まずはブタの腸管を高精度X線CT装置でスキャンし、内壁の粘膜の形状を取得。サイズを拡大した上で、ひだの間隔や厚みを調整し、円筒形状と合成して3Dデータを構築しました。
また、吻合不全の有無を確認するためにリークテストを実施されたいとのご要望に沿い、吻合する側とは逆側にシリンジの差し込み口を設けて水を注入できる仕様を採用しました。腸管は、位置によってサイズが異なるため、2サイズご用意。肛門側の直径6㎜と口側の直径15㎜のモデルを製作しました。
▶ 比較検証のため、2種類の素材と工法で製作
腸管モデルを開発するにあたり、素材の異なるモデルを試作し、それぞれの評価結果を確認しながら妥当性の高いモデルを採用されたいとのことで、2種類の素材と工法で製作しました。一方は、ウェットタイプの特殊なインク剤を用いて専用の3Dプリンターで製作。もう一方は、ドライタイプの軟らかいウレタンを用いて成形した腸管を赤色に着色し、その外側をピンク色の塗料で厚く覆うことにより二層構造としました。
今回製作した2種類の腸管モデルは、ブタの腸管や市販されている腸管モデルと比較しながら、見た目のリアリティや触感、吻合後の形状、実際の手技との相似性などを検証されました。
▶ 開発コストを抑制した、トレーニング用器具
吻合トレーニングでは、腸管モデルを固定する必要があります。今回は、市販されているゴム製ブッシングの任意のスリットに切り込みを入れ、トレーニング中に腸管が動かないよう固定する方法をご提案しました。
また、手技中に縫合糸を整理するためのホルダーは、当社の既製品の一部を取り除いてカスタマイズしています。どちらも、既製品を流用することにより、開発コストの抑制につながりました。
Face and construct validity assessment of training models for intestinal anastomosis in low-birth-weight infants
Pediatr Surg Int. 2021 Dec;37(12):1765-1772.
■多施設共同研究のご案内
腸管モデルを用いた多施設共同研究にご興味をお持ちの方は、以下の連絡先までご連絡をお願いいたします。
【連絡先】 東京大学 小児外科 高澤 慎也先生
【E-mail】 takazawas-psu[at]h.u-tokyo.ac.jp ※お手数ですが、[at]を@にご変換ください。