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第6回 日本オープンイノベーション大賞 厚生労働大臣賞を受賞しました

 

 

国立循環器病研究センター、および東京大学大学院新領域創成科学研究科、株式会社UT-Heart研究所、ジャパンメディカルデバイス株式会社、PIA株式会社、株式会社クロスメディカルから構成される研究開発コンソーシアムは、内閣府が実施する第6回日本オープンイノベーション大賞授賞式にて「厚生労働大臣賞」を受賞しました

表彰式は、2月14日17時より霞ヶ関内閣府で執り行われました。

取組・プロジェクト名称

『リアルとバーチャルの融合により小児心臓外科手術を支援する新しい心臓シミュレータの開発』

◆プロジェクトの概要

先天性心疾患は出生児100人に1人が発症し、新生児乳児に死亡をきたす最も頻度の高い疾患です。治療の対象となる小児の心臓は小さく、立体構造が複雑で病気の種類も多いため、外科手術は困難を極めます。そのため手術には、1)複雑な心臓大血管の立体的な構造を正確に把握すること、2)手術後に血液の流れがどのように変化するかを事前に正確に予測し手術術式を決定すること、が必要不可欠になります。今回のプロジェクトは、これらの問題を、独自の精密3Dプリンティング技術と、スーパーコンピュータを用いたシミュレーション技術をもって解決しようとするデジタルツインプロジェクト一環です。

◆連携の内容と目的

1) 3D心臓モデルの開発(リアルシミュレーション)
国立循環器病研究センターと(株)クロスメディカルは、患者の心臓CT画像から精密3Dプリンティングと真空注型技術を組み合わせることで、実物大の軟質3D心臓モデルを開発しました。患者の心臓をありのまま再現した柔らかい心臓モデルを外科医が手にすることで、手術前に患者の複雑な心臓内部の構造を詳細に確認することができるだけでなく、患者の心臓モデルを切開したり縫合したりすることで、事前に手術の予行演習を行うことが可能となります(2023年7月、クラスII医療機器として薬事承認)。

2) ped UT-Heartの開発(バーチャルシミュレーション)
一方で、東京大学と(株)UT-Heart 研究所は、スーパーコンピュータを使った数理シミュレーションにより、患者の心臓の拍動を分子・細胞機能に基いてコンピュータ内で忠実に再現する、世界最高峰の心臓シミュレータ“UT-Heart” を開発してきました。今回はこの技術を基盤とし、小児先天性心疾患に特有なさまざまな問題を解決することを目的に、新しい心臓シミュレータである“ped UT-Heart”を開発しました。考えられる複数の手術術式での術後の心臓の機能や血液の流れをコンピュータ上で予測することで、個々の患者に最も適した治療方針を客観的なデータに基づき提案することを可能とします。

これら20年に及ぶ研究開発の成果である2つの技術を融合させた世界初の手術支援システムは、外科手術が困難な複雑先天性心疾患の診療において、最先端のものづくり技術と最高峰のシミュレーション技術をハイブリッドすることで、個々の患者にとって最善の方法を提案し支援ことを可能とします。

 

◆参考リンク

・国立循環器病研究センター プレスリリース:https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_41867/

・内閣府HP:https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/prize/2023.html

・厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/_00010.html

 

◆謝辞

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)から以下の支援を受けて開発が進められてきました。
1) 医工連携イノベーション推進事業「小児先天性心疾患患者の救命とQOL改善を目指した最適な術式決定を支援する心臓シミュレータ“ped UT-Heart”の開発と事業化(2023-2025)」
2) 医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業「小児先天性心疾患患者の生涯にわたるQOL改善を目指した、最適な治療方針決定のためのマルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレーター”ped UT-Heart”の開発と事業化(2020-2022)」
3) 医工連携事業化推進事業「立体構造が極めて複雑な先天性心疾患患者への3Dモデル診断による術時間削減を実現する、オーダーメイド型超軟質3D精密心臓モデルの開発・事業化(2017-2019)」
4) 医療機器開発推進研究事業「超軟質精密心臓レプリカの作成による心臓外科手術トレーニングと個別化医療の確立に向けた研究(2014-2016)」